当番世話人挨拶
第1回臨床血管健康研究会開催にあたって
健康な血管は長寿につながり、不健康な血管は脳卒中、心疾患、腎臓病などをきたし、QOLを低下させます。従って、血管の健康状態を的確に把握し、障害を早期に発見し、生活習慣や治療により血管の健康増進させることが重要です。本邦では先人達の創意で半世紀前から血管の健康状態を把握する指標が開発されています。最近、血管バイオメカニクス研究会や脈波研究会などが中止となり、討議の場が極端に減りました。この度、NPO法人血管健康増進協会が設立され、趣意に沿った形で、第1回臨床血管健康研究会が開催されることになりました。
血管弾性の指標として、欧米では脈波伝播速度(cfPWV)がゴールドスタンダードとされていますが、本邦ではbaPWVとCAVIが用いられています。血圧に影響を受けない3指標、hfPWV(長谷川法)、stiffness parameter β(林-川崎法)、CAVIはそれぞれ日本から発信されました。このうち、CAVIは測定が簡単で、血管弾性を比較的正確かつ的確に捉え、血管年齢を推定できるのが好評で、現在は各種疾患の診断、治療あるいは疾病の予防に繫がる医療機器として高く評価されています。欧州高血圧学会、欧州心臓病学会などで、シンポジウムが幾度も開催され、欧米でも多施設大規模研究などがおこなわれ、圧依存性のcfPWVとの差異が検討されています。CAVIの英文数は約500編になりましたが、海外からの論文数は2年前から日本人の英文論文数を上回っています。
本邦では、baPWVとCAVIの測定器機は既に約3万台販売され、血管弾性度、ABI、健管年齢推定の自動測定が病院やクリニック、健診センターや人間ドック、あるいは健康作りの健康パークで使われています。しかし、使用機器の種類、使用方法、標準値などにばらつきがあり、cfPWVに比べて前向き大規模研究が不十分です。本研究会は研究者の情報交換の場として、国際的な視点から討議されるように企画しました。また、これから新しく研究を始める方々にも臨床での使い方を考える絶好の機会になるとおもいます。
この研究会がきっかけとなり、国民が自らの血管の健康状態を知り、血管の健康増進を図り、血管弾性測定器機が医療人と国民に役立つ医療器機として更に大きく育つことを願っています。
NPO法人 血管健康増進協会
理事 高田正信
富山逓信病院 病院長