集積されつつあるCAVIの
動脈硬化性疾患予測因子としてのエビデンス

齋木厚人
東邦大学医療センター佐倉病院 糖尿病内分泌代謝センター

CAVI(Cardio-ankle vascular index)は、stiffness parameter β理論に基づいた血圧非依存性の血管機能指標である。これまで、動脈硬化性疾患を有する患者でCAVIが高いこと、糖尿病、脂質異常、高血圧、肥満、喫煙、SASなどのリスクによりCAVIが上昇すること、またそれらに対する治療がCAVIを低下させることが明らかにされてきた。今回我々は、CAVI値が将来の冠動脈疾患のイベント発生を予測するかを検討するため、5年間の前向き調査を行った。

対象は当院に定期通院し、糖尿病、脂質異常、肥満、高血圧を一つまたは複数有し、かつ動脈硬化性疾患を有さない患者1003例(平均62.5歳、男性51.2%、BMI23.9、CAVI9.25)。観察期間は5年以上とし、エンドポイントは心筋梗塞、狭心症の新規発症とした。CAVIの測定には、VaSera VS-1500(フクダ電子)を用いた。

平均follow-up期間は6.7年、90例(9.0%)が新規の冠動脈イベント(急性心筋梗塞41例、安定狭心症29例、不安定狭心症20例)を発症した。加齢(65歳以上)、肥満(BMI25以上)、喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症の6つを冠動脈リスクと定めたところ、平均リスク数は2.6であった。

BaselineのCAVI値を元に4分位に分けると、CAVIが高値の群ほど将来の冠動脈イベント発症率が高かった(図)。年齢、男性の割合、糖尿病と高血圧の有病率はCAVIが高値の群ほど高かった。Cox比例ハザードモデルでは、CAVIが1上昇すること、男性、喫煙、糖尿病、高血圧が、冠動脈イベントに対する独立したリスクであった(表)。
(Sato Y, Nagayama D, Saiki A, et al. J Atheroscler Thromb. 2016, 2;23(5):596-605.)

本研究以外にも、肥満、メタボリックシンドローム、CVD既往者を対象とし、CAVIが心血管イベントおよび脳卒中の独立した予測因子であることが多く証明されている(1-4)。

今回、集積されつつあるCAVIの動脈硬化性疾患予測因子としてのエビデンスを紹介する。

  1. Kubota Y, et al. Artery Res, 2011; 5:91–96.
  2. Laucevičius A, et al. Medicina, 2015; 51(3):152–158.
  3. Satoh-Asahara N, et al. Atherosclerosis, 2015; 242(2):461-8.
  4. Gohbara M, et al. Circ J. 2016; 80:1420-6.