理事長挨拶

第1回臨床血管健康研究会開催にあたって

血管の障害は、脳卒中、心臓病、腎不全、動脈瘤など、様々な疾患をもたらして主要な死因となっています。また、QOLを低下させて、高齢者では介護が必要な状況になる可能性もあります。

動脈硬化を含む血管の障害は、高血圧、喫煙、高脂血症、糖尿病など様々な危険因子によってもたらされ、進行すると考えられます。したがってその予防は、血管の障害を早期に発見することと、さらに生活習慣の改善が重要と考えられます。しかし、血管の障害に基づく疾患が多岐に亘るにも関わらず、メディアなどで取り上げられる機会は少なく、一般市民の認知度も低いです。

また、医学界におけるこの分野の研究は、各学会等での研究発表がみられるが、十分とは言えず、特に大規模な多数の患者についての長期的な追跡研究が不足しているといえます。

動脈の機能、老化を表す一つの指標として、CAVIは血圧に依存しない指標として用いられてきています。しかし、CAVIの基準値は、ガイドライン等ではっきりと決められていません。CAVIの理論、測定法、エビデンスをレビューして、基準値を決める事が重要と考えられます。この4月に開催された第3回日本血管不全学会学術集会で、血管不全診断指針作成に関するシンポジウムが開かれ、CAVIの基準値についての発表もありました。CAVI 8未満がnormal、9以上がabnormal、その間をborderlineとすることで、検討されているとのことでありました。多くの研究者らによって、前向き研究もおこなわれていますが、本研究会が広く議論の場として活用されることを希望します。

血管の障害に関しては、研究者や医療従事者のみならず一般市民が広く情報を得る機会を設ける必要があり、医療従事者をはじめとする研究者がこの分野の調査・研究、知識の普及・啓発を行うとともに、最新の医療や健康管理に関する情報提供、指導、支援を一般市民に提供する場を設けることが必要です。

今回、本NPO法人主催の第1回 臨床血管健康研究会を開催し、医療従事者をはじめ一般市民相互の連携と交流を深め、英知を結集し、議論を深め、本NPOの目的を達成できるよう努力したいと考えています。

NPO法人 血管健康増進協会
理事長 折茂 肇
公益財団法人 骨粗鬆症財団理事長