睡眠時無呼吸症候群と動脈硬化

葛西隆敏
順天堂大学大学院医学研究科循環器内科・心血管睡眠呼吸医学講座
順天堂大学医学部附属順天堂医院 睡眠・呼吸障害センター

睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome, SAS)患者の生命予後を決める重要な疾患として心血管疾患が挙げられている。疫学研究におけるSASと心血管疾患の関連性に加えて、SASが動脈硬化に進展に関与するメカニズムを示す研究結果も報告され、実際にSAS患者において、様々な動脈硬化指標の悪化、進展などに関しても多数の報告がなされている。持続気道陽圧(continuous positive airway pressure, CPAP)などのSASに対する特異的治療による動脈硬化指標の改善、動脈硬化に起因する疾患の進展予防、長期予後の改善などを示すデータも多数報告されており、SASと動脈硬化の間の因果関係の更なる説明となっているが、引き続いて行われてきた多くの無作為化試験では観察研究で得られた効果を再現できていない。これはCPAPなどの治療に対するアドヒアランスが問題と考察されており、実際に多くの観察研究ではアドヒアランスと効果発現の間に正の相関関係があることが示されている。従って、アドヒアランスを保つための技術に関しての研究、CPAPなどの治療に変わる代替療法の開発などが、動脈硬化の悪化・進展、ひいては予後改善のための研究開発として注目されている。本講演では、これらを簡単にまとめ動脈硬化の進展予防におけるSASとその治療に関する理解を深めていただきたい。