動脈硬化症早期把握の試み

小林雄祐
済生会横浜市南部病院 腎臓高血圧内科

高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病や、喫煙などが危険因子となる動脈硬化症は、心血管・脳血管疾患発症の引き金となり、健康寿命延伸の妨げとなることで世界共通の重要な問題となっている。そのため、動脈硬化症の早期把握が重要である。

動脈硬化を早期に把握するためには、その危険因子によるリスク蓄積の徴候を各種検査により確認することが重要である。非侵襲的で簡便な画像検査として、頸動脈超音波検査による内膜-中膜肥厚(IMT: Intima-media thickness)測定があり、血管の性状を画像的に捉える事ができるため、非常に有用である。しかし、これまで蓄積されているエビデンスは主に総頸動脈のIMTに関するものである。ところが、実際は総頸動脈IMTは年齢に大きく依存し、必ずしも生活習慣病によるリスク蓄積を鋭敏に反映してるとは言えず、早期の動脈硬化の把握には向いていない。一方、頸動脈球部IMTは総頸動脈IMTより早期に肥厚することが分かっており、生活習慣病の影響がより強く反映され、早期の動脈硬化の徴候を把握するためには有用であると考えられるが、未だにエビデンスは乏しい。

我々は最近、頸動脈球部のIMT肥厚が動脈硬化指標であるCAVIとの相関が強く、また自律神経機能低下と起立性低血圧重症化に関わる事を報告した(Kobayashi Y. et al. Clin Exp Hypertens 2018)。動脈硬化症早期把握のための頸動脈球部IMT測定の重要性に関してさらなるエビデンス蓄積が望まれる。